英語圏のゲームが日本で売れない理由は、Twitterをしてないからかも!?スウェーデンの会社が日本でゲーム公式アカウントになるまで

※本稿ではXをTwitterと呼びます。なぜかというと、Xと書くと社内チャットを検索するとき不便なため、Twitter呼称を続けているからです。


弊社は小規模なPR会社ですが、Twitterに力を入れています。
世の中のにPR会社で、SNSアカウントを本格運用する会社は少ないと思います。多くの場合、PR会社にPR依頼を行う製品・サービスには予算があり、公式アカウントがあり、そのアカウントをPRしていくものだからです。
が、こと海外のインディーゲームにおいては事情が違ったのです。

今回は、弊社がTwitterを始めた理由と、Playtonicの公式アカウントとして情報を発信するまでの事情を紹介いたします。

英語圏のゲームが日本で売れない!→それはTwitterをしてないから!?

Neon Noroshiは北欧ゲームを日本で宣伝する会社として始まりました。英語圏の開発者の中には、ゲームに自信があっても「このアートは日本でウケないかも」とか、「日本とは文化的に違うからダメかも」と日本での販売に二の足を踏む方が多く、それを助けてきたのです。

それを続けるうちに、北欧ゲームが日本向けに出ない一因として「Twitterをできないから」というのがありそう、という考えに行きつきました。

日本のゲーム宣伝特異点、Twitter

なぜ、Twitterがそれほど重要だと感じたのか?

それは日本でのPR活動において、Twitterがちょっと信じられないほど効果的なゲーム宣伝SNSだったからです。何気ないツイートでもRT数と同じぐらいのウィッシュリストを獲得することがあります。例えば、以下のツイートをした日、開発者から「200もウィッシュリストが増えたよ!」と喜びの連絡をもらいました。

Twitterではちょっとしたツイートでも効果がある。効果的な告知ができると1,000~2,000ほどのウィッシュリストが獲得できることもある。この数字だけだとTwitterのすごさが実感できないと思うので、欧米の指標を出しますね。
欧米ではTwitterでバズってもせいぜい500、オンラインの大きいイベントに参加したとき、TikToKのバズりで1,000ぐらいのウィッシュリスト増加数と言われています。

つまり、日本のTwitterは、欧米圏で主流のSNSでバズったり、大きなイベントに参加したのと同じぐらいのウィッシュリストを獲得できてしまうゲーム宣伝に適したSNSなのです(※)。実際、さまざまなレポートでも日本のTwitterの使用率は高く、Twitterからのみゲーム情報を獲得しているゲーマーもいるようです。

ピックアップ,「TELLER」読者を対象にしたゲームに関するアンケート調査結果を発表

【調査】ゲーマーのSNS利用状況を調査!8割以上のゲーマーがSNSや投稿サイトを利用

近年では「Twitterはそろそろやばい」と言われていますが、それでも日本において「Twitterの強さ」は特筆ものです。

※さすがに何度もSNSに露出しているゲーム、バズりがでかくてゲーマーの外まで届くとウィッシュリスト登録数=リツイート回数というほどの効果はなくなると思います。しかし、初めてバズったときの効果はとても大きく、1度もTwitterで露出していないゲームと、1度は露出したゲームで差が出るように感じます。

日本語でTwitterしない開発者には、日本の声が届かない

日本でゲームを展開するとき、このTwitterの賑わいが障害になります。北欧ゲーマーの主流SNSはredditやInstagramやTiktokなどです。Twitterはゲーム開発者の使用率が高いのですが、ゲーマー向けではないSNSと思われています(日本から見ると信じられないかもしれません!)。買収されてXになってから日常的に使うのを辞める人も増えました。
あと、北欧ではTwitterは情報を受け取ってアクションを起こすメディアではないので、ウィッシュリスト登録率が低い。

だから開発者はTwitterを力を入れない。そうなると、日本ゲーマーの声が北欧の開発者に届かないので、自分のゲームが日本でウケるかどうかもわからない。むしろ、「Tiktokは世界で流行っているのに、日本人のティックトッカーは声をかけてこない(つまり、日本でもTiktokが流行っている前提の世界観)し、需要がないんだろう」なんて方向に考えてしまう事例もありました。

英語圏インディーゲーム開発者の悩みを解決したい

そんなわけで、欧米の小規模メーカーはTikTokやInstagramに最も力を注ぐわけです。そして、いざ日本に出そうというときに「日本はTwitterが人気と聞いた。じゃあ公式アカウント作ってツイートするか」とアカウントを作り始めたところで、フォロワー100程度。ゲーム情報を発信しても、よほど幸運に恵まれない限り広まりません。

SNSは毎日運用して、フォロワーがいてなんぼですから。

じゃあ、日本向けにTwitterをずっと運用できるかというと……まず無理でしょう。1年~2年に1本のゲームしか作っていないインディーゲームの会社は毎日Twitter出す情報なんてないし、日本語ができるメンバーも普通はいない。文化の違い、言語の違いもあって発言も難しい。やる気を出して英語と日本語を併記しても、逆にどっちにも届いているようでどっちにも届かないみたいなことになってしまう。

ゲームメディアで紹介してもらってTwitterでバズるときもありますが、かなりの注目作でないとTwitterで効果的に露出できないことも多い。
小規模な北欧インディーゲームが日本向けにゲームを出しても売れない要因の1つにSNSの違いもあるのではないか、と弊社の現Twitter担当は考えました。

皆さん「日本語対応していないから」と考えられるかもしれませんが、日本語訳をしてもゲームが知られないと売上2~3桁の世界。逆に、ゲームがきっちり知られれば、アクションゲームなどは「英語だけど楽しめる」と日本語に対応しておらずとも結構売れることもあるので、まずは「知られないと」というわけです。

そして、それを解決する方法として、Neon NoroshiのTwitterアカウントを成長させ「日本向けTwitterアカウントを育てる余裕のないインディー開発者の代わりにツイートする」ことを考えました(※)。

※基本的には弊社のメンバーのおすすめゲームを毎日ツイートしていますが、インディー開発者に頼まれると無償でSNS共有しています。Twitter露出を考えている開発者の方は一度ご相談ください。

その後は、毎日インディーゲームの情報をつぶやき……幸運なことに日本の皆様に応援していただき、ときには大きくバズることもありました。ツイートの反響が大きいと「これだけ需要があるなら日本語に対応しようと思う」などと、開発者さんから連絡をいただくことも1度や2度ではありません。

「このゲームが日本でどう見えるか知りたい」と相談されたとき、私たちがツイートしたこともあります。開発者さんは、その反響を見て自信を得ていました。

変わったところでは、日本語に自信がありすぎる開発者に「俺は日本語ができる、試しに日本人に聞いてみてくれ」と言われ、勘違いを止めることにも役立ちました……(その節はありがとうございました)。ちなみに、この『SULFER』の作者は2024年7月19日から始まる「BitSummit Drift」で出展しているので、ぜひ会いに行ってあげてください。喜ぶと思います。

これらの経験を経た今、「日本でTwitterが使えると有利だし、バズれば開発者も自信をもって日本に向かってゲームを発売できるのだ」と今は確信を持って言えます。

そして、ゲーム情報をつぶやき続けて約1年。ついにNeon Noroshiのアカウントからゲームの公式情報をツイートして欲しい、という依頼がきました。

『タヴァントーク』公式、Playtonic公式に!

そのゲームは『タヴァントーク(Tavern Talk)』。ファンタジーTRPGの金字塔『D&D』とコーヒーショップのマスターになるビジュアルノベル『コーヒートーク』からヒントを得たゲームで、プレイヤーは冒険者酒場のマスターになり、料理を振る舞って冒険者を出迎え、話を聞きます。そして冒険者たちにクエストを提供することで、彼らの運命が変わる……というゲームです。

このゲームに関して発売前の短い期間、公式情報をつぶやき続けた結果、多くの方に応援していただけまして、やはり「日本でのプロモーションに、小規模の開発者はTwitterが効果的」という自信を深めました。

そんなこんなで私たちが1年かけて行ったTwitterアカウント育成計画は結実し、今回Playtonicというパブリッシャーさん全体の公式情報を発信し、助けるときがきました。

今まで通り新しいゲーム情報も発信しつつ、新たにゲームメーカーの公式情報も提供し、より多くの方法でインディーゲームに貢献していきたいと思います。皆様、今後ともよろしくお願いいたします。

まずは『ELSIE』の動画を弊社で日本語字幕を付けて配信していますので、よろしくお願いします。ちなみに、日本の公式アカウント(我々です)が動き出したのと同時に『ELSIE』のSteamデモをアップデートしたとのこと。

気になったらデモを遊んだり、ウィッシュリストに入れてみてください。

おまけ。メディアや配信者に少しお返しをしたいんです

インディーゲーム専門のPR会社である弊社は、ゲームメディアや配信者さんのお世話になるのですが、そこに大きなお金を落とすことができない業を背負っています。
インディーゲームデベロッパーの多くは小規模で、広告するにしろ大きな予算を持っていません。プレスリリースの日本語訳と配信を依頼するのが限界(そして、その額はたったひとつのメディアに広告を出す金額よりもさらに小さい)。

弊社がプレスリリースを出し、掲載情報をまとめて公開しているのはメディアや配信者さんへのささやかな恩返しのつもりでもあります。ゲームを応援してくれているメディア、配信者さんのポストもリポストしていただければ嬉しいです。

2024年7月20日11:00…誤解を受ける表現、分かりづらかったと指摘があった個所について直しました。また、日本語対応しても知られないと売上が悪い、という段落を追加しました。

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