北欧腐女子の開発チーム「Rotten Raccoons」の初作品『OBSCURA』、Steam早期アクセス100%好評でスタートできました!

以前、働いていたゲームスタジオの5人のスウェーデン男子を題材に乙女ゲームをエイプリルフールに作ったという話を公開し、たくさんの方に読んでいただけました。

日本の腐女子が北欧のゲームスタジオに就職し、隠れた腐女子仲間を見つけて乙女ゲーム開発スタジオを立ち上げた話

その後に、そこで結成したチームでRotten Raccoons(以下RRと省略)というチーム名をつけ、『OBSCURA』というヴィジュアルノベルを隙間時間にコツコツ作成しているという話をしたのがもう2年ぐらい前。
これは仮面で素顔の見えない、闇の世界に生きる訳ありなイケメンたちと関係を持つ(選択によっては恋愛あり)する乙女ゲームです。
北欧で腐女子を集めて乙女ゲーム開発スタジオを作り、乙女ゲーム虎の穴「Otome Jam」でゲームを開発してきた話

そしてついに!
今年2024年9月、全3章からなるこのヴィジュアルノベルの1章と、2章の前半まで作って早期アクセスリリースできました。来年には0.5章づつ追加していき、2026年には全3章が完成する予定になっています。

現在、このゲームは英語にしか対応していません。でも、いつか日本語対応したい……ということで、実は日本でニーズを探るため東京ゲームショウ2024のスウェーデンブースでショーケースしていました。



今回は、その時に使った日本語のピッチデッキの一部を公開したいと思います。

2.5章というのは、1章と2章の半分のことです。日本の感覚だと1.5章ぶんだと思います。

前回の記事を書いたとき、「なぜ腐女子なのにBLを作らないの?」という質問がありましたが、主人公の性別が選べるので、プレイヤー対男性(キャラクター達)の恋愛要素がBLになるか乙女ゲームになるかはプレイヤー次第。また、基本ゲーム内の男性キャラクター同士の恋愛要素をいれていないのは、自分たちが好きなカップリングがストーリーのなかで勝手にカップリングされると開発チームが結構冷める傾向があるので、男性キャラ同士のBL要素は入っていません。
だって、開発チームから勝手なカップリングを押し付けられたらいやじゃないですか、読者として!

おっと、エキサイトしてしまいました。
ともあれ、ヴィジュアルノベル開発者の方で、ピッチデッキ全体が見たい方はご連絡ください。シェアします。


ちなみに、本作はリリースしてから1か月の反響ですが……なんと100%好評で111レビューを超えました。レビューの中には2021年のオトメゲームジャムで無料デモを公開してくれていたときから応援してくれていた人のメッセージも。
感慨深いものがあります。数ある多くのゲームのマーケティングを手掛けてきた私ですが、100%好評で110レビューを超えるのはかなりミラクルです。

この高評価には5つ理由があると思っています。


1.1章の前半まで(かなりのボリューム)無料デモで公開されている。

無料でかなりのボリュームを読むことができ、そこで続きが読みたい人だけが購入してくれているので、購入するVNのストーリー内容に関しての誤解や認識の齟齬がない。そしてお金を出した分のストーリーに対してのプレイヤーの期待値に答えられている(今のところ)。
Steamのレビューには面白さだけでなく、期待値のコントロールが必要です。面白いゲームを作っても宣伝が課題だと「言うほどではないな…」と思われてレビューが低くなってしまいます。適切に内容を伝え、期待を外さない面白さを提供するのが重要なのです。そういう意味で、十分プレイできるデモは役に立ちます。

2.ヴィジュアルノベルプレイヤーは、待つこともご褒美

私たちのDiscordでは、ヴィジュアルノベルを漫画に近いジャンルとして認識をしている方が多いです。つまり、連載漫画のように章ごとのリリースや小さなアップデートを待つのを楽しみとしている人も多いように感じます。
他のゲームのジャンルではある程度メインゲームは完成させて、あとでDLCを追加してく感じになると思うのですが、この章ごとの出し方はVN独特だなと思います。
個人的にも、なかなか次の章がでない方がいろいろ妄想膨らんで楽しくはあります(爆)

3.誤字、脱字、言語のミスやバグがかなり少ない

ヴィジュアルノベルは読むことが一番重要なプレイなので、誤字や脱字などがあると、結構萎えます。漫画とかでも誤字あると

ん(。´・ω・)?

って一瞬没入していたファンタジー世界から現実世界に引き戻されたりしますよね。
これは本当に興ざめです。RRのナラティブライターはカナダ出身者で英語のネイティブですが、私たちはチーム内でプレイテストを何度かすることに加え、Discordでコミュニティに呼びかけてベータテストを10日間かけて行い、誤字や脱字やバグを潰していきます。コミュニティの人はいち早く新しい章を読むことができるという特典が生まれかなりの人がベータテストに参加してくれています。

お金があるスタジオはネイティブの英語プルーフリーディング(校正)に出せますが、コミュニティメンバーの方が日頃からヴィジュアルノベルをよく読んでいるし、細かい言い回しやキャラクターの性格などを加味したうえで誤字や脱字を発見してくれたり、修正提案をだしてくれるので、とても助かります。そしてベータテスターの皆さんは、ロイヤルファンになってくれます。

4,Valveに成人コンテンツ認定された

これは一見悪い事でもありますが、良いこともあります。
今回のゲームは確かに子供向けではありません。ストーリーには官能的な表現はもちろんありますが、アートはキスシーンがMAXで、半裸、ましてや全裸、局部の書き込みは一切ありません。2度異議申し立てをしたのですが、取り下げてもらえませんでした。(なんでや、ドラマティカルマーダーには警告ついてないのに!!)

結果、Steamユーザーはログインしていないとページが見られない、ドイツと中国からはアクセスできない状態になっています。そうなると、どんなに評価が良くてもSteam上でのアルゴリズムに載ることができず露出がかなり下がるのが悪いことです。

良いことは、ゲームのSteam Storeページには興味を持ってこのページに直接に来ている人だけがくるということです。Steamのアルゴリズムでたまたま見つけた、という人はかなり少数になり、このページにたどり着く人は完全に誰からか話を聞いてくるようなヴィジュアルノベルファンに絞られます。すると、リテラシーが低い人がダウンロードしてしまって、期待外れで低評価がつくことを防げます。
期待値調整ができるのです。


ちなみに、ドイツからの購買を見逃すわけにはいかないので、SteamのKeyをitch.ioで販売しています。(もちろんitch.ioでも購入できますが、アチーブメントがないのでSteamで買いたい人が多い)ページにアクセスできなくてもSteam Key自体はドイツと中国でもアクティベートできてしまうところが本当に謎です。


5,自分たちの欲しいVNを製作している

私たちは自称腐女子の5人でVNを作っているのですが、自分たちが本当に読みたいと思う作品を書いています。5人とも10代や20代はときめきキュンキュンが詰まった乙女ゲームや漫画で育ってきたのですが、そろそろ30代前半から後半で、もう少し官能的ですこしスパイシーな(でもエロではない)ヴィジュアルノベルがプレイしたいと。

でもそういう作品はあまり欧米には少なくて、乙女ゲームとエロ・ヘンタイヴィジュアルノベルの二極化がかなり起きていて、その間の耽美で官能的なストーリーが少ないと。それなら、そこを自分たちで作りに行こう!と業界への渇きと飢えを情熱というエネルギーに変え、ここまで走ってこれて、その結果、私たちのような30代前後の女子が同じように共感してくれて、購入して評価してくれているのだと感じています。愛は伝わる。それにつきるかなと思います。

そういう官能的な作品って日本の同人誌やヴィジュアルノベルに既に多くあると思うのですが、欧米だとヴィジュアルノベル形式になっている作品はまだまだ少ないと思います。


気になる売上などは……というと、1か月でSteamとitch.io合わせて4,000本販売し、デモ版への寄付金額も含め売上は800万円を突破。
Steam Pageを出したのは2023年5月で現在のWishlistは22,000Wishlits、購入へのコンバージョン%は8.8%。
itch.ioは2022年7月にストアをオープンし、無料版が10万DLありました。しかし、itch.ioの早期アクセスの売上は1カ月で1,549DL。こう書くとコンバージョン率が低いように見えますが、itch.ioでファンになってくれてSteamに流れてくれてる人がほとんどなので、itch.ioは早くから運営してよかったな、と思っています。

年内にはSteamセールが絶叫フェス(元ハロウィンフェス)、オータムセール、ウィンターセールあるので、年内に8,000本は突破想定です。まだ英語だけで売り上げの40%が北米からなので、今後は他の言語にも対応していき市場を広げていきたいと思います。個人的には日本語にも対応したいです!

早期アクセスから製品版でるまであと1年半はかかるので色々セールしながら、フルリリースまでまたマラソンしていくので、また結果をお伝えできればと思います。

そして今後のRRの動きとしては、粛々と作品を書いていくのはもちろんですが、今回早期アクセスのリリースやコミュニティマネージメントで学んだことを糧にもう一つ上のステップアップを考えています!こちらは是非こうご期待で!

それでは久しぶりにヴィジュアルノベルの話題をスウェーデンからお届けしました。
日本のヴィジュアルノベル開発者のみなさんのなにかのお役にたてれば幸いです!


世界にもっとヴィジュアルノベルを!

あ、OBSCURAのSteamストアページは↑から見られます。

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