Steam上でゲームが目立つ位置に表示するアルゴリズム・仕組みをValveが公開。英語資料の要点を日本語でまとめました。
「Steam ストアで特集されたり、目立つ位置に表示されたい!」
ストアフロントなど、Steamストア上で目立つ位置に表示されると膨大なトラフィックを生み、膨大な売り上げを生みます。
どのゲームのプラットフォームでも、ストアのフロントページで目立つことは、全ゲーム開発者の夢と言えるでしょう。
そのため、
「ウィッシュリストをたくさんためなければならない」
「好評価のレビューがたくさんないといけない」
などと言われます。果ては、
「あなたのゲームページへのアクセス数が多いほどいいので、外部から誘導しましょう」
「Valve社員に担当者をつけてもらう必要がある」
「Valveに金を払うと特集バナーを打ってもらう枠がある」
などの宗教めいた噂がささやかれたりもします。
そういった噂が蔓延する状況に(ある程度)終止符を打つべく、ValveがSteam ストアでゲームが露出する仕組みについての公式資料とプレゼンテーションがありました。
原文はこちら。
上記の噂は、本当に噂に過ぎないか、今となっては古い事実ということも多いです。
たとえば担当者については4、5年前くらいまではゲームに担当者がついていた時代はありました。が、現在は全てValveのサポートページから連絡する事になっています。
またSteamのストアフロントにはお金を支払って買えるバナー枠がないことが明らかにされています。
ページへのアクセス数に関しては「関係ない」と資料の中には書かれていますが、売れているゲームやWishlistが多いゲームはトラフィックが多い事が前提なので「全く関係ないか?」と言われるとそうではないですが、ここでは意味のないトラフィックを膨大なお金で購入したとしてもコンバージョンがなければ実際のアルゴリズムには響かないという意味の言葉が見て取れます。
これまでValveの様々なプレゼンを見てきていますが、このValveのプレゼンでも彼らが伝えたいことに「Steamはいつの時代もプレイヤーファーストでありたい、引いてはそれが開発者にも良い影響を与えるはずだ」という気持ちがあるように感じます。
下記スライドの1ページに書かれている「私たちはSteamはPay to Win(お金を払えば勝てるプラットフォーム)になるべきではないと思ってるよ」というメッセージがその代表的なものです。
どの業界においてもプラットフォームのマネタイゼーション(収益化)は販売手数料と広告枠が王道のビジネスモデルなのですが、現在のSteamは販売手数料のみ(それでも30%も取られますが)で成り立っています。
広告を導入してしまうと、広告費を膨大に持つ企業がインプレッション(ストア表示)を持つことになってしまい、どうしても広告費のないインディーゲーム開発者にとっては不利になる。また膨大な広告費をもつ企業のゲームが必ずしもその広告を見る人にあったゲームだとは限らない、自分のタイプじゃないゲームの宣伝をストアフロントでずっと見せられているプレイヤーにとってもSteamが居心地のよいところであり続けるのはなかなか難しいですよね。
という部分からSteamは多くのインディーゲーム開発者からゲームを発見してもらう機会の平等性が(いまのところ)あるプラットフォームとして、またプレイヤーからは自分の好きな面白いゲームが発見できる場所として支持があるのです。
とはいえ、まあゲームをプレイヤーにとどける為にSteamは色々試行錯誤し20年間いろいろな軸からアルゴリズムを作ってきました。この色々なアルゴリズムが謎に謎を呼んでいるわけなのですが、今回の資料からはっきり書かれていることは下記です。
ざっくりまとめると、
1.Steamはアルゴリズムによる露出と、キュレーションによる露出がある
2.アルゴリズム部分は、Steamを利用するプレイヤー個人にあわせて表示が変化し、関心が高いゲームが露出する仕組みになっている。
3.期待のゲームはウィッシュリストが多いものが出る
4.売上ランキングはDLC等も含めて売上が高いゲームが表示される
5.新着ゲームには一定以上の関心を集めた新作が発売日順に表示される
6.各プレイヤーのアルゴリズムエリアに表示されるゲームは以下が考慮される。
・あなたがプレイした、またはウィッシュリストに登録したゲーム
・フレンドがプレイ中またはウィッシュリストに登録したゲーム
・あなたの友人が推薦したゲーム
・トップセラー(地域別)
・新規リリースとアップデート
・あなたがフォローしているキュレーター
7.キュレーションされるための「関心」を測る要素として売上が存在する
8.ローカライズは重要
ということで、多くの人に支持される、興味を持たれるほどSteam ストアフロントに表示されやすくなり、ストアに表示されやすいということはアクセスを集めて売れやすくなり……と、雪だるま式に売れやすくなる性質をSteam ストアは備えていると説明されています。
この資料単体を読むと、トラフィックやレビュー評価、ウィッシュリスト、早期アクセスなどは関係ないと書かれていますが、その横にUsually! と書かれているので鵜呑みにしないように気をつけてください。
では、あらためて原文をどうぞ。
先ほど書いた通り、この資料は有用ですが鵜呑みにしてはいけません。
次回TGS2023後にこの資料を読み解くための説明をしていきたいと思います。
また、現在Valveにプレゼンを日本語訳したものを配布していいか問い合わせているので、良い返事がもらえればそれも公開したいと思っております。
この記事を書いたNeon Noroshi社は、「欧米から日本、日本から欧米へインディーゲーム」を宣伝するマーケティング会社です。今後も北欧を中心にゲーム文化の面白話、ゲーム開発者の助けになる情報を発信していきますのでX(@NNoroshi)フォローしていただけると嬉しいです!
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